産業用メタバース: 新たな仮想世界はどのようなチャンスをもたらしてくれるのか?

2023/10/05

メタバースとは、物理世界と仮想世界が融合した、デジタルで3次元のインタラクティブな空間を意味しています。このような技術は「産業用メタバース」として、製品開発や当社のお客様とのコラボレーションにおける新たな可能性を提供します。SICKでは、特化されたシンクタンクがこの課題に取り組んでいます。ポッドキャストSICKnificantでは、仮想化プロジェクトマネージャーのアーント・ゼーレンセンがこの可能性について語っています。

Arnd Sörensen (links) im Gespräch mit Podcast-Moderator Patrick Bornstein (rechts).
ポッドキャストホストのパトリック・ボーンシュタイン (右) と対談するアーント・ゼーレンセン (左)
Arnd Sörensen (links) im Gespräch mit Podcast-Moderator Patrick Bornstein (rechts).
ポッドキャストホストのパトリック・ボーンシュタイン (右) と対談するアーント・ゼーレンセン (左)

自身が擁するチームのタスクについて、アーント・ゼーレンセンは次のように説明しています。「シンクタンクでは、デジタル世界を観察しています。その際、大きな変化をもたらす可能性のある破壊的技術に注目し、それをSICKでも使用できるかどうか、またどのように使用できるかを調査しています。メタバース、特にSICKにとっては産業用メタバースが、このような破壊的技術であるとみています。」

産業用メタバースは、様々な技術を包括した上位概念です。その例として、デジタルとアナログの世界を融合させた「AR (拡張現実)」や、完全な仮想空間である「Virtual Reality」などがあります。産業分野では、早くもこの技術による3次元のバーチャルモデルを使用して、簡単には動かせない非常に大きな機械なども、見本市やお客様の下で紹介することが可能になっています。「この技術は、製品開発やお客様とのコラボレーションにおける新たな可能性を提供してくれます。私たちのシンクタンクチームは、できるだけ多くの分野でこの技術を有効に利用してもらうため、社内の基盤作りに取り組んでいます。」アーント・ゼーレンセンは、このように述べています。

Augmented Reality ist eine Kobination aus digitaler und analoger Welt.
AR (拡張現実) とは、デジタルとアナログの世界の融合を意味します。
Augmented Reality ist eine Kobination aus digitaler und analoger Welt.
AR (拡張現実) とは、デジタルとアナログの世界の融合を意味します。

バーチャルカスタマーセンター: かつてないほど現実に近いソリューション開発

SICKでは、一般的な「既製品」以外にも、個別ソリューションの開発にますます力を入れるようになっています。まさにここで、産業用メタバースのメリットが発揮されるのです。アーント・ゼーレンセンは「アプリケーションの紹介や具体的な問題解決など、時には現実の世界よりもうまく行くことがある」と述べています。

SICKのメタバースの具体的な活用例として、お客様や潜在的な新規のお客様とお会いできるバーチャルなカスタマーセンターを挙げることができます。「ここで私たちは自社製品やソリューションを紹介したり、コンベアベルト上で物が移動する物流アプリケーションなど、お客様によって異なる個別ソリューションをシミュレーションしたりしています。例えば、当社のセンサをどこに配置するのか、センサの寸法はどのぐらいなのか、さらにこの特殊なアプリケーションでは何個のセンサが必要になるかなどを示すことができます。お客様は問題を解決するソリューションが実際にどのようなものであるのかを実際に見て確認することができます。」

Mit dem Virtuellen Customer Center können Anwendungen präsentiert oder konkrete Probleme gelöst werden.
バーチャルカスタマーセンターでは、アプリケーションを紹介したり、具体的な問題を解決したりすることができます。
Mit dem Virtuellen Customer Center können Anwendungen präsentiert oder konkrete Probleme gelöst werden.
バーチャルカスタマーセンターでは、アプリケーションを紹介したり、具体的な問題を解決したりすることができます。

SICKは、2022年にリリースされたSARAアプリ (SICK Augmented Realiy Assistantの略) とともに早くも産業用メタバースに向けた第一歩を踏み出しています: このアプリは、センサデータを現実世界とリンクさせることで、AR (拡張現実) によるトラブルシューティング、サービス、コミッショニングをより簡単にします。

SICK IntegrationSpace
データ可視化とエラー分析のための拡張現実アプリ
SICK Augmented Reality Assistant

次のステップ: デジタルツインを使う

将来的には仮想空間でお客様にお会いし、実際に存在する「デジタルツイン」システムを一緒に観察して、必要に応じて問題を解決するというようなことも可能になるでしょう。このような仮想イメージでは、単純な3次元モデルから実際の機能、メカニズム、エレクトロニクスのデジタルシミュレーションに至るまで、様々な詳細レベルを設けることができます。「産業用メタバースでデジタルツインを使用すると、問題が生じた場合、なんらかの変更や調整が実際の場面でも機能するかどうかを見極めることができます」仮想化スペシャリストのゼーレンセンは続けます。「ハードウェアやソフトウェアを問わず、このようなアプリケーション向けの技術はすでに存在しており、現在急速に発展しています。私たちも同様に、現在SICKのこのようなアプリケーションに取り組んでいます。」

Arnd Sörensen ist Project Manager Virtualisation bei SICK.
Arnd Sörensen ist Project Manager Virtualisation bei SICK.

根本的な変化が予測されるコラボレーション形態

産業用メタバースが提供するあらゆるメリットについて考えると、将来的にはすべて仮想空間だけで行われるようになり、現実世界では何も行われなくなるのだろうかという疑問が必然的に生じます。決してそうではないとアーント・ゼーレンセンは語ります。「重要なのは、本当に産業用メタバースを使用するメリットがあるのは、どのような場面なのかを見極めることです。多数のケースで新たに魅力的な可能性が広がりますが、やはり実際に会った方が絶対に良いというシチュエーションもあります。だから、将来的にすべてメタバースで行われるようになることはないと確信しています。」

また、ハイブリッドソリューションも生まれてくると考えられます。例えばロイテにあるロジスティクステクノロジーセンターでは、実際にアプリケーションを見ることができます。「ただし、オーストラリアから来るとなると、そんな長旅はしたくないと考えるかもしれません。このような方々にとっては、産業用メタバースでイメージを提示した方が、より良い解決策になるに違いないでしょう。」

仮想化スペシャリストのアーント・ゼーレンセンは、次のように締めくくっています。「ここでは今現実に様々なことが起こっており、この新しい可能性をどのように活用するかについては、今後数多くの素晴らしいアイデアが生まれてくるに違いありません。確実なのは、現在私たちが、自分たちの働き方やコラボレーションのあり方を根本的に変化させる発展のごく始まりに位置しているということです。」ゼーレンセンの言葉は、この技術が持つ魅力を反映しています。

 

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