自律型清掃ロボット市場は急成長しており、専門家は、2025年までには今日の5倍の数のロボットが使用されるようになるだろうと予測しています。専門人材が不足していて、業界での経済的な圧力が極めて高い状況では、自然な流れであると言えます。自動作業型清掃マシンの使用頻度が高まり、空港、工場、病院やスーパーマーケットなど、公の社会で同マシンが使用されている領域が益々広がっているのに伴って、安全性に対する要件も高まっています。IECはそれを受けて2021年6月に基準を見直し、新規格を公布しました。清掃機器製造でイノベーションリーダーであるKärcherは、規格に準拠した自律型床洗浄ロボットKIRA B 50をSICKと共同で開発し、清掃ロボット市場において首位に立っています。
ポールポジションの安全コンセプト: 新規格をすべて満たす清掃ロボットKIRA B 50
すべてを自分で行うのではなく、SICKの包括的なサポートを活用
清掃マシンを自動化する開発プロセスでは、様々な課題が待ち受けていました。人物防護コンセプトでのサポートを求めて、KärcherはSICKに協力を要請したのですが、実は両社には、ハードウェアで長年にわたってパートナーシップを育んできた背景があったのです。KIRA B 50の宣伝文句は「Don’t do it yourself! (自分でやらないでください!)」なのですが、SICKのサポートを象徴するスローガンは、それを文字って「Don’t do everything yourself! (何から何まで自分でやらないでください!)」とすることができるかもしれません。なぜならば、Kärcherはロボットの安全性にまつわるあらゆるテーマで、SICKの有能なエキスパートネットワークに頼ることができたからです。
SICKで戦略的プロダクトマネージャーを務めているアンドレアス・レンドラーは、広範囲にわたる要件項目を次のように説明しています。「特に重要だったのは、全方位防護と転落防止の実現に加えて、センサをコンパクトに設計することでした。また、清掃ロボットには通路や狭いスペースだけでなく、カーブ走行も効率的にクリアすることが求められましたし、障害物を確実に検出して迂回することも必要になっていました。そして当然のことながら、新規格をすべて満たすことが大原則として設定されていました。」
「KIRA」 – Kärcher Intelligent Robotic Application
KIRA B 50は、「Kärcher Intelligent Robotic Application」の頭文字をとった略語ですが、その名に相応しい清掃ロボットを作り上げることを目指して、KärcherとSICKは膨大なノウハウを計画、設計と試験に注ぎ込みました。要件の高い安全コンセプトの実現で、SICKのエキスパートチームがアドバイザーとしてサポートした結果、nanoScan3タイプのセーフティレーザスキャナ3台とセーフティコントローラFlexi Softを搭載したインテリジェントなロボットアプリケーションが完成しました。この構成では、清掃ロボットの環境認識によって最適なナビゲーションが確保されているだけでなく、特に重要なことに、周囲にいる人物の安全性も保証されています。
転落の危険を防止し、全方位を防護
「清掃ロボットは前進と後退の両方を行うため、まずはKIRA B 50の全方位防護が主要な課題になりましたが、2台のnanoScan3を車両の角に対角線上に配置することで、最適なソリューションを見つけることができました」と、Alfred Kärcher SE & Co. KG.のアリーナ・ザイターKIRA B 50プロダクトマネージャーは説明しています。275°の広大なスキャン角度と長い防護フィールド検出距離を誇るこのレーザ機器なら、水平方向で全方位防護が実現し、新しい安全規格IEC 63327を満たすことが可能になります。
転落防止に対する主要な要件を満たすために、3台目のセーフティレーザスキャナnanoScan3が使用されていますが、その理由は、スーパーマーケット、大学キャンパスや空港などの多くの公の場では、自律走行ロボットにとって、エスカレータ、階段やランプが安全面でのリスクになっているためです。そこでKärcherはKIRA B 50に、nanoScan3を転落防止用の「Cliff (崖) LiDAR」として装備しました。このスキャナは自律型清掃マシンの前面に取り付けられており、自機の前にある床を斜角で検出します。nanoScan3が高さの急な変化を検出すると、信号がセーフティコントローラFlexi Softに送信されます。
階段の段差など、転落の可能性がある端の部分に向かう走行が停止し、Kärcherのナビゲーションユニットが別のルートを選択します。また、nanoScan3では構造とサイズがコンパクトであることが、このセンサの最適な配置に役立っています。市場で最小の部類に入るこのセーフティレーザスキャナは、KIRA B 50のマシン設計に省スペースで完璧に組み込まれています。
狭いところでも高い生産性と効率を発揮
SICKのセーフティシステムの特殊な安全機能は、防護フィールドが速度と舵角に応じて選択されるため、狭い通路とスペースだけでなく、カーブ走行での安全性に対する要件も満たしています。原則的には、障害物の前で確実に停止するには、速度が高ければ高いほど、必要なスキャンフィールドも大きくなりますが、それと同時に、安全フィールドは出来る限り小さくして、余計な減速や停止を防止する必要もあります。SICKのセーフティシステムはこの問題に、nanoScan3の最大128個の防護フィールドを舵角に応じて切り替える機能で対応しています。これは、狭い通路やスペースでの清掃ロボットの生産性向上につながっています。また、防護フィールドをダイナミックに拡大することで、広大なオープンスペースでの高い速度と効率向上が可能になっています。
プロダクトマネージャーのアリーナ・ザイターは、安全機能の重要性を強調しています。「Kärcherにとって安全性は最優先事項ですが、介入できる人物が現場におらず、当社の清掃マシンが自律稼働している状況で、当社ではこの安全コンセプトを100パーセント信頼することができています。」それにはパフォーマンスレベルdが必要ですが、その認証取得過程でSICKはアドバイザーとしてKärcherをサポートしました。この共同開発の総合的な結果に、ザイター・プロダクトマネージャーは満足しています。「KIRAはSICKとの密接な協力のもとで生み出されました。ロボット工学では、信頼性の高いインテリジェントなセンサが極めて重要ですが、これに関して非常に経験豊富なプロバイダであるSICKを味方につけることができました。」
回り道することなく希望通りの結果を達成
トータルセーフティシステムを提供できる数少ないメーカーの一社であるSICKは、KIRA B 50に清掃ロボットの確実で安全な動作にまさに必要なセンサを備え付けました。これはKärcherにとって、セーフティレーザスキャナとセーフティコントローラ、そしてセーフティエンコーダまでもが、専門性と信頼性の高い認証取得サポートも含めて、一手に提供されたことを意味しています。「KIRA B 50のカスタマイズ型安全コンセプトは、Kärcherと継続的かつ密接に協力してきたことの賜物です」とアンドレアス・レンドラーは振り返り、次のように総括しています。「Kärcherから開発プロセスの非常に早い段階で支援の要請を受けたときは、とても感激しました。そして自分たちの専門知識とノウハウでお客様をサポートして、目指していた安全コンセプトに回り道をすることなく予想以上のスピードで到達することができたのです。」
Kärcherでは、安全認証を取得した自律型清掃ロボットに関連するイノベーションで業界にソリューションを提供し、生産性と経済性の向上ならびに人材不足問題への効果的な対応に貢献していくことを目指していますが、マーケットリーダーである同社では、KIRA B 50はまだ始まりに過ぎないと考えていると、ザイター・プロダクトマネージャーは強調しています。「当社では、自律型清掃マシンのフルラインナップを計画していますが、SICKのセンサとセーフティコントローラはKIRAセンサコンセプトの主要要素であるため、これらの機器は今後のシリーズでも確実に使用されるはずです。」
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