植物が良好に育つため、園芸農家では重さ10キロもの鉢を毎日のように移動させ、配置換えする必要があります。これは汗だくの重労働です。そこに目を付けたのが、フランスInstar Robotics社のPierre Delarboulas氏とAdrien Jauffret氏です。同社の自律型ロボット「Trooper」は、これらの鉢の運搬をこなし、園芸農業の自動化に貢献します。3D LiDARセンサMRS1000は、この過酷な環境での正確なナビゲーションと環境認識を実現します。
スーパーTrooper:自律型ロボットが園芸農家の鉢植え運搬をサポート
Instar Robotics社は、Pierre Delarboulas氏とAdrien Jauffret氏によって2018年に設立された若いスタートアップ企業です。二人は人工知能とロボット工学の博士号を取得しており、長年ロボット工学に携わってきました。そんな彼らのミッションは、人々の日常生活をサポートする実用的なロボットを開発し、人間を本来の職務の中心へと戻すことにあります。
園芸農家の鉢植え運搬をサポート
二人の創業者は早くから農業に関わることを考えていました。この分野は、ロボット工学に多くの技術的課題を投げかけるからです。屋外の条件は非常に変化に富み、絶えず変化し続けます(環境、天候、土壌...)。そのため開発されるロボットは適応力に優れ、柔軟で、高い信頼性を備えている必要があります。
広範な調査の末、彼らは園芸農業およびそこでの鉢植えの運搬という、手作業で反復して行われる肉体的に非常にきつい仕事に可能性を見出します。こういった作業は主に季節労働者によってまかなわれていますが、重労働のため、労働力の確保がますます困難になっています。つまりそこには、作業員の負担を軽減するロボットソリューションを開発するための前提条件がすべて揃っていたのです。
農園での作業のうち、苗木の品質にとって特に重要なことが2つあります。それは苗木同士を近づけること、そして互いに離すことです。前者は、植付けの開始時に利用可能な面積を最大化するために行います。準備段階および鉢植えの際には、最初の成長をうながすため、鉢は温室の床に隣り合わせに配置されます。一定の期間が過ぎると、鉢は農園の別の場所に個別に運ばれます。そうすることで植物のさらなる成長をうながし、病気の蔓延も防ぐことができます。農園によっては数百ヘクタールもの広さがあったり、また重さ10キロほどの鉢を10万個以上運搬しているところもあります。こういった反復作業が自動化ソリューションによってどれほど助けられるか、想像に難くないでしょう。
園芸農家を支援するハンドリングロボットの開発
そのため、園芸農家が農場で鉢をA地点からB地点に運んだり、鉢を近づけたり離したりすることを支援する、小型の自律型ロボットを開発することは理にかなっています。こうしてTrooperが誕生しました。
すぐに明らかになったのは環境認識の問題でした。ロボットは次のことを行う必要があります:
- 独立して動く
- 周囲の状況を把握する
- 障害物を認識する
- 植木鉢を検知する
- 鉢をつかむために正しい位置につく
- 方向を定める
- 以上のすべてを安全な方法で、人間と協力しながら行う
したがって3D LiDARセンサの選択は自然なことでした。最終的にInstar Robotics社が選択したのはマルチレイヤスキャナMRS1000でした。
Trooperの「眼」が環境を認識
MRS1000 はマルチレイヤスキャナであり、ある意味Trooperの「眼」でもあると、Pierre Delarboulas氏は語ります。これは物体までの距離を示す点群を作成し、それを使って経路を計算し、物体を再構築するための形状をモデル化することができます。Instar Robotics社が開発したアルゴリズムは、点群およびLiDARセンサの4つのレイヤーによって再構築された円(つまり植木鉢)を探すことで、物体を検出します。
物体の反射率もセンサによって直接検出されるため、物体の色による識別がより容易になります。これによりロボットの反応性が高まり、ロボットはより適切な判断を下し、環境に合わせて適切に動作できるようになります。
3D LiDARセンサの性能による大きな成功
MRS1000のパフォーマンスが、このプロジェクトを成功に導いた鍵でした。このセンサは275°の視野で物体を検出・測定します。MRS1000は、4つの異なるレベルでの同時測定により、物体の詳細な検出と移動方向の追跡を可能にします。頑強な筐体は埃・熱・湿気に強く、HDDM+技術により霧や強い光の中でも高い信頼性と高性能を誇ることから、Instar Robotics社の要件すべてを満たします。
園芸農場で15%を節約
園芸農家たちの意見は一致しています。「Trooper以前とTrooper以降」があるのだと。こうPierre Delarboulas氏は語ります。この業界での労働力不足は深刻であり、その原因のひとつに植木鉢を近づけたり離したりする力仕事があります。ロボットを導入することで作業員はその重労働から解放され、その分、他の高度でやりがいのある作業に集中できるようになります。
このプロジェクトは生産性の面でも成功していることが証明されています。ロボットは疲れ知らずで、どんな天候もいとわず鉢を最適な位置に配置します。これにより園芸農場で最大15%のスペースを節約することができます。
Trooperへの投資が回収されるまでには、機械の利用状況にもよりますが、およそ4年から5年かかります。これは農業分野の投資としては比較的短い期間であるといえます。
「常にサポートしてくれる誰かがいる」
これは、フランスのSICKチームについてPierre Delarboulas氏が語った言葉です。TrooperはSICKと共同で段階をふんで構築され、継続して改良されました。例えば、当初センサはロボットの上部に取り付けられており、雨や土などの外部環境に強い影響を受けていました。そのため特注のキャップで保護しなければなりませんでした。SICKチームによる検討の結果、コンパクトな保護装置が設計されさらに性能が向上しました。この連携は双方にとって非常に満足のいくものでした。
そして、未来はどうなるのでしょうか?
新製品への期待は尽きません。現時点では、Trooperの機能を拡張し園芸農業における労働力不足の問題に対処するため、3つの新しいツールが開発されています:
- 植物の伐採と剪定
- 粘着テープで植物を包むことによる害虫駆除
- 土壌改良(例えば鉢の中の植物の周囲に肥料を均等に散布する)
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