跡形もなく消えた? 証拠保全で入荷エリアを透明に

2025/04/08

Continental社とSICKが協力し合い、自動車部品サプライヤーのレーゲンスブルク工場に、透明な入荷エリアを実現することに成功しました。両社は、テストバージョンからスタートし、IGS (Incoming Goods Suite)を用いて、デジタル化された荷物受領システムソリューションを段階的に開発しました。これは実践を積みながら実用化に至ったものです。

Incoming goods
Incoming goods

Continental社のレーゲンスブルク物流センターでは、1日に最大400個の個別小包と、多数のパレット配送が入荷エリアに届きます。標準便や速達便、優先配送および緊急度の低い配送、完全配送および分割配送、宛先不明の小包、時には破損した小包など、ありとあらゆる小包が、無数の小包配送業者によって個別のデジタル配送証明とともに引き渡されます。「まれに、荷物が行方不明になってしまうこともあります。このように混乱した現場では、全体像や見通しがすぐに失われてしまうからです。」Continental社レーゲンスブルク物流センターの責任者を務めるMarco Immisch氏は説明します。

これが何を意味するのか、物流センターの入荷エリアのプロセス技術担当であるOtto Schweiger氏が説明します。「発送は通知されていても受領済みではないステータスの不明瞭な荷物、入荷エリアや工場に停滞している荷物、、誤った貨物分類にわりあてられた荷物。これらすべてが、個々の貨物の正確な検索を困難にし、捜索に多大な労力を要し、時間を浪費し、プロセスを妨害し、コストを発生させ、入荷エリアと社内の荷物受領者との双方に不満をもたらしていました。」

parcels getting held up in incoming goods
parcels getting held up in incoming goods

Continental社の2人の幹部がSICKのIGSに注目するようになったのは、解決策を提供するはずのこの複雑なシステムに対する不満が大きくなったからでした。SICKヴァルトキルヒのHSCC製品管理責任者Alexander Aberle氏と、デュッセルドルフのSICK Vertriebs- GmbH社の営業担当Carsten Kunze氏による最初のプレゼンテーションは、「安価でシンプル、かつ柔軟性があり、迅速な導入が約束されたシステム」という期待に応えるものであったと、Marco Immisch氏は語ります。「しかしながら、」とOtto Schweiger氏は続けます。「当時まだテストバージョンであったIGSを、レーゲンスブルクのContinental社における入荷業務のすべてのプロセスとロジックを考慮に入れ、データセンターとネットワーク接続された運用系として導入できるようにするには、まだ多くの作業が必要でした。」

expectations of a “simple, cost-effective, and flexible system
expectations of a “simple, cost-effective, and flexible system

もう一つの側面として、Continental社が自社専用のソリューションを望んでいなかったことがありました。「そのために、SICKと協力協定を結び、完成したシステムを採用すると同時に、それを他の企業にも向けた市場志向のソリューションとして設計することを目指したのです。」Marco Immisch氏は説明します。「それはもちろん、私たちにとっても興味深い構想でした。」Alexander Aberle氏とCarsten Kunze氏は振り返ります。「なぜならば、Continental社と協力することで、初のスタンドアロン型テストシステムを、アプリケーション固有の拡張モジュールを使用して、ネットワーク対応の運用系へと段階的に発展させることができたからです。つまり、現在のIGSは、ボトムアップの原則に基づいて、顧客の要望や実務上の要件に常に応えながら、一歩ずつ構築されたものであるといえます。」

Incoming goods at Continental
Incoming goods at Continental

IGSの機能を段階的に構築

IGSの機能の共同開発は、スタンドアロン版のテストシステムから始まりました。「焦点となったのは、モバイル端末とその機能性、使いやすさ、そして受容性でした。その過程では、パフォーマンスと人間工学が絶えず最適化され、またSICKが開発したオペレーター支援アプリには、荷物の登録プロセスでユーザーをリアルタイムでサポートする多くの機能が統合されました。」こうOtto Schweiger氏は語ります。IGSソリューションには、たとえばユーザインタフェースの最適化やさまざまな配送業者による異なるラベルの自動認識のような基本機能が統合され、またContinental社がパレット上の荷物を一時保管するために使用する保管場所の割り当てといった個別機能は、機能拡張モジュールとして開発されました。「つまりContinenta社、そして他の企業も、IGSの機能を自社の要件に合わせて独自に調整することができるのです。」とAlexander Aberle氏は説明します。
The Operator Assistance App, developed by SICK, assists users with the real-time parcel registration process.
SICKが開発したOperator Assistanceアプリは、小包登録プロセスにおいてユーザーをリアルタイムでサポートします。
The Operator Assistance App, developed by SICK, assists users with the real-time parcel registration process.
SICKが開発したOperator Assistanceアプリは、小包登録プロセスにおいてユーザーをリアルタイムでサポートします。

Continental社レーゲンスブルクのデータセンターへのソフトウェアのIT統合も段階的に完了しました。「当初、スタンドアロン版は入荷エリアのみに限定されていました。」Marco Immisch氏は言います。「この開発段階でも、SICKがサポートおよびサービス目的でリモートアクセスを行えるよう、VPNおよび携帯電話回線による接続が設置されました。その後のデータセンターへの統合は、IGSの機能がますます拡大する中でのテスト運用と並行して準備されました。」現在では、すべての荷物がモバイルコンピュータで登録され、リアルタイムで中央データベースに入力されます。中央の概要リストには、発送番号の他にも、追跡番号、配送業者への割り当て、日付と時刻、優先順位、保管位置ID、実行済みの内部搬送プロセスに関する情報など、荷物固有の配送およびプロセスに関するデータが保存されます。

IGSは、実際のプロセスの改善に加えて、入荷データを集約して特定の評価のために使用することも可能にします。どの配送業者が、いつ、どれだけの荷物を、どの追跡番号で、どのような状態で配達したか、優先配送の量はどれくらいか、配達のピークや空白時間はいつ発生したかなど、IGSソリューションならこうしたデータ分析をリアルタイムで生成・表示することができます。

Insight Tools
商品入庫の検出および処理を行うモジュール式ソフトウェアソリューション
Incoming Goods Suite
Relishing the joint project: Alexander Aberle (SICK), Otto Schweiger (Continental), Carsten Kunze (SICK), and Marco Immisch (Continental)
共同プロジェクトを楽しむ人々 (左から): Alexander Aberle (SICK)、Otto Schweiger (Continental社)、Carsten Kunze (SICK)、Marco Immisch (Continental社)。
Relishing the joint project: Alexander Aberle (SICK), Otto Schweiger (Continental), Carsten Kunze (SICK), and Marco Immisch (Continental)
共同プロジェクトを楽しむ人々 (左から): Alexander Aberle (SICK)、Otto Schweiger (Continental社)、Carsten Kunze (SICK)、Marco Immisch (Continental社)。

IGSで入荷の貴重なデータを活用

デジタル化はデータ収集から始まります。この観点からいうと、すべての入荷が貴重なデータ源であることになります。Continental社では、責任者がSICKと協力してこれを実現し、かつてのブラックボックスを透明な入荷エリアへと変えることに成功しました。しかし、それで終わりではありません。Marco Immisch氏とOtto Schweiger氏は、将来的にこの貴重なデータを保険金請求処理の文書化にも活用したいと考えています。そのアイデアとは、損傷した荷物について、すでに受領時の登録の過程でその写真を撮影し、そのデータを既存の配送データと連携させるというものです。商品管理システムに供給業者と配送業者の関連データが追加され、ボタンひとつで、あるいは将来的にはAIによって、クレームがデジタルで自動的に作成されるようになるのです。もう1つのアイデアは、IGSを、その要件の大部分が重複している出荷エリアおよび発送に適合させることです。
 
IGSによるデジタル証拠保全で入荷を確実に把握。
 

 

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