トンネルは、人間が造る素晴らしい建造物であり、交通にとって不可欠な存在です。トンネルでは、その内部だけでなく前後においても、精巧な技術が重要な役割を果たしています。この技術が完璧に機能することで、人命が救われているのです。しかし、トラックの積載物が左右にはみ出ることで、トンネル内部の壁や技術設備に損傷をもたらすことが、繰り返し起きています。ASFINAG社は、SPIE Dürr Austria社と共同で、これを確実に防止するソリューションを開発するため、EBE-Solutions社の専門家に協力を求めました。そこで採用されたのが、SICKのLiDARセンサです。
車幅を超過したトラックの進入を防ぐ
渋滞を望む人はいません。交通はスムーズに流れるべきものです。今日では交通テレマティクス・ソリューションが、多くの領域においてその理想を現実のものとしています。それらの技術が交通状況を把握し、制御しているのです。ウィーンに拠点を置くEBE Solutions GmbH社は、20年以上にわたり、こうした革新的なシステム、つまり具体的には交通・駐車スペース管理、交通データの収集・分析、交通安全のための個別ソリューションの開発と導入に携わってきました。「交通利用者の危険を最小限に抑える」ことは、普遍的なテーマです。中でもトンネルの監視は特有の問題をはらむことから、特別な焦点となります。
オフェナウアー・トンネルの片道閉鎖
Spie Dürr Austria社は、は、タウエルン高速道路 (A10号線) のGollingインターチェンジからWerfen本線インターチェンジまでの約13キロメートルの区間において、トンネル設備および交通管制システム全般の更新工事を請け負うことになりました。オフェナウアー・トンネルはその改修工事に伴い、2023年秋より、トンネルの片側を順次閉鎖していく必要がありました。工事期間中、すべての交通が、片方のトンネルのみを通行することになりす。こうした状況下で、幅を超過したトラックがトンネルに度々損傷を与えていました。とりわけ夜間において、3.20メートルの最大許容幅が繰り返し無視されていました。
EBE-Solutions社の代表取締役Alfred Paukerl氏は次のように述べます。「この車幅制限には理由がありました。トンネルは通常、地面に近い部分はかなり広くなっていますが、その円筒形の構造により、上方の実際の通行可能幅が大きく狭まります。つまり上に行くほど、トンネルは狭くなります。そのため、積載物の高さが高いトラックは、通り抜けるのがきつくなることがあります。」とりわけ、他の幅広の車両が対向してくる場合はなおさらです。「そういった場面では、ドライバーはできるだけ右に寄って回避しようとします。それによって避難経路の標識や制限速度のLED表示板が幾度も傷つけられ、ときには完全に引き倒されてしまうことさえありました。」Alfred Paukerl氏は語ります。翌年に片方のトンネルの改修が完了したら、次にもう片方のトンネルが改修工事に入ります。その際、せっかく改修の終わったトンネルで同様の事態が起きないようにと、ASFINAG社とSPIE Dürr Austria社は共同で、EBE-Solutions社の専門家に助言を求めました。
オーダーメイドの測定ソリューション
課題は、走行中の車両の幅を完全自動で検出し、幅を超過したトラックがトンネルに入る前に迂回させられるようにすることでした。Alfred Paukerl氏は続けます。「同じような仕組みは、車両の重量測定でも知られています。現在では交通の流れを妨げることなく測定することも可能になっています。そこで構想されたのが、同じようなソリューションを幅測定のために開発することでした。当社はすでにタウエルン高速道路の工事区間の手前に渋滞警報システムを設置していました。そのためASFINAG社が、こういった幅測定システムについて当社に問い合わせてきたのは、自然な流れでした。既成のソリューションを提供することはできませんでしたが、私たちは喜んでこの課題に取り組むことを決め、センサのスペシャリストであるSICKをパートナーに迎え入れました。」
EBE-Solutions社の一事業部門であるEBE-Roadは、SICKのエキスパートと共同で、複数のコンセプトスタディを作成し、これらをASFINAG社に提示しました。その後、EBE-Solutions社は、タウエルン高速道路 (A10号線) のトンネル改修工事の一環として、関連するパイロットプロジェクトを実施する契約を獲得します。このプロジェクトでは、トンネル制御システムに統合するための綿密なソリューションが求められました。これは、高速道路の運用要件に加え、設備の安全性に関するあらゆる側面を考慮したもので、Spie Dürr Austria社とEBE-Solutions社によって共同で構築されました。
3台のセンサですべてを監視
新しいシステムの設置は、オフェナウアー・トンネルの約1キロメートル手前、Villach方面行きの既設の跨道橋で行われました。「SICKとの協議の結果、2つの車線を検知するには、車両の両側面を捉えるために、3台のセンサを、上から路面を見下ろすように設置することが必要であると決定されました。」EBE-Solutions社の代表取締役は説明します。3台のレーザセンサはそれぞれが180度の角度をカバーします。取得したデータから「点群」が生成され、ソフトウェアによって画像に変換されます。そこから車両の輪郭を認識することができます。このソリューションは、トラックだけでなくあらゆる車両に適用できます。点群データをもとに車両の幅が算出され、定義された所定の幅を超えていることをシステムが検知すると、そのデータがトンネル制御システムに送信されます。
自動化されたプロセス
車幅を超過した車両が検出され、アラームが発生すると、あらかじめ定められた自動化手順が始動します。トンネル管制センターに警報通知が送信され、当該の車両がトンネルに入るのを防ぐために専用の交通制御プログラムが作動します。段階的な速度抑制、案内板、およびトンネル入口付近の赤信号、さらにはトンネル手前のLED表示板 (2か国語および記号) によって、なぜ交通がストップしたのか、その理由が後から来る車両に周知されます。
手作業による再測定
ASFINAG社の交通管理担当者が、トラックを近くの駐車場へと誘導し、手作業で車両の寸法を測定します。「車幅が実際に規定を超えていれば、交通管理担当者が執行機関に通報し、そこで行政処分が下されます。その後、トラックは駐車場から側道に抜け、Uターンすることができます。」こうPaukerl氏は説明します。さらにEBE-Solutions社は一歩進んだ対策も講じます。除雪車が許容幅を超えたときのために、「リビジョンスイッチ」を設置したのです。除雪車がトンネルに近づくと、当該システムが、トンネル管制センターにより手動で、トンネル制御システムへのインタフェースを介して一定時間無効化されます。これにより、除雪車はシステムを作動させることなく通過できるようになります。「これらの操作はすべて記録されます」と、EBE-Solutions社の代表取締役は説明します。「私たちは、測定したすべての車両が点群として保存され、統計解析が可能になるように、このシステムを設計しました。ただし、車両のナンバープレートが記録されることはありません。」
信頼性の高いLiDARセンサ
本システムに組み込まれているLMS511型の2D-LiDARセンサは、保護等級IP 67に準拠したコンパクトな筐体と内蔵ヒータを備えています。堅牢な設計と低い消費電力により、過酷で厳しい使用環境にも適しています。またさらにLMS511は高速な信号処理、複数の入出力ポート、そして複数のセンサの同期機能を備えています。ソフトウェアもSICKからの納入範囲に含まれています。このソフトウェアはセンサに合わせて作られており、用途に応じたさまざまな調整が可能です。あらかじめ定義されたフィルタを使用すれば、たとえば霧やほこり、雨、あるいは窓ガラスによる反射などを検知して除去することが可能になります。またレーザ技術を使用することで、外乱光による干渉を受けないという利点も得られます。
あらゆる天候での測定
このプロジェクトでは、さまざまな気象条件も考慮されました。たとえば激しい雨の際には、大型車両によって水しぶきが上がることもあります。そんな場合でも、水しぶきではなく、車両の寸法が正確に測定されなければなりません。「SICKと協議を重ねた結果、測定範囲を、車両の上辺から路面上80センチメートルまでに絞り込むことができました。」Paukerl氏は語ります。
このことはトンネル内部で発生する目立った損害には影響しません。なぜなら、輸送物が損害を引き起こすのは、それがトラックに積載されている場合に限られるからです。トンネルの下部は幅員が広く、また車両が損傷を与えるようなものはほぼ存在しません。分かりやすい例にボートが挙げられます。春になると多くのボートがイタリアへと運ばれますが、この時期には積載物の高さや幅が規定を超えているトラックがよく見られます。工事期間中、当該の区域での特別輸送許可は一切出されないため、こういった車両は別のルートを通行しなければなりません。
許されない誤作動
A10号線では、理由のない赤信号は当然「許されない」ものです。つまり、いかなる誤測定も許容されません。さらに、このプロジェクトはオーストリアで初の試みでもありました。そのため、センサの校正には特に重点が置かれました。この目的のため、まずは車道幅が測定されました。その後、各センサのX軸、Y軸、Z軸を個別に調整するため、センサの真下中央に基準物体を配置しました。校正を経て、2024年9月にシステムが本格稼働を開始すると、直ちにいくつもの警報が作動しましたが、それらはすべて正しい警報でした。トラックの積載物が規定の幅を超えていたのです。しかし、その後2週間ほど経過すると、警報の数は減っていきました。どうやら運送業者の間で、「トンネルの手前では昼夜を問わずレーザが車幅を監視している」との情報が広まったようでした。
