道路交通ではまだ黎明期にあるものが、多くの企業ではとっくに日常となっているのが、無人搬送システムとして知られるAGVです。AGVはスムーズな作業工程を実現し、柔軟性の面で新しい基準を打ち立てます。これこそがMelkus Mechatronic社の得意分野です。ザルツブルグを拠点とする同社は、高度にモジュール化された車両コンセプトとSICKのセンサ技術を基盤としており、それが創造的なロジスティクス・ソリューションに無限の可能性を与えています。
モジュール式で移動型 – AGVで走行中も最大限の柔軟性を実現
柔軟性は生産における最大の成功要因となりつつあります。バッチサイズ1を経済的に実現するための鍵がここにあります。アンドレアス・メルクスは、エレクトロニクス企業Sigmatek社の創業者であり、2014年以降はMelkus Mechatronic社で無人搬送システムの市場を文字通り「動かしてきた」人物です。その彼がこう確信します:「将来的には、多くの生産工場で固定した連鎖型のプロセスが消失し、独立した作業島が必要に応じて形成されたり解消されたりするような、柔軟な生産プロセスに取って代わられるでしょう。このビジョンに私は魅了され、社内ロジスティクスへと関心が向かうようになりました」。
Melkus Mechatronic社で、アンドレアス・メルクスは企業がAGVの世界に参入するための基礎を築きました。Sigmatek社の技術ももちろん最初から関与していました。「私たちはSigmatek社の電子部品と機械部品だけでなく、的を絞ったソリューションを開発することのできるトップクラスの開発部門も利用することができました。つまり完璧なパートナーシップがあったのです」
表面荷重の少ない小型デザイン
Agumos、それはMelkus Mechatronic社の、生産現場を動かす俊敏なAGVの名前です。Agumosの設計の重要な点は、操縦性、小型デザイン、表面荷重の低さ、そして何よりもモジュール設計にあります。それにより1つのコンセプトに基づいて、大小の箱から満載のパレットの搬送まで、さまざまなAGVの実現が可能です。駆動技術は8つの車輪に分散されているため、Agumosは地面に対する点荷重が比較的低く、また回転式の走行装置により、静止時に車輪が回転することがありません。
重要なのは「走行範囲」
AGVにとって、次の充電までの移動距離は重要な要素です。そのため輸送車両のプラットフォームを開発する際には、バッテリーの航続距離を最大化するために、軽量化とエネルギー回収に特に意識が注がれました。アンドレアス・メルクスはこう語ります:「考え抜かれた設計、最先端のバッテリー技術、信頼性が高く高速なWLAN技術、その他多くの重要な開発をもって、初めてこのようなコンパクトなAGVが実現しました。Agumosではあらゆることが可能です。このプラットフォームでは、駆動技術、設計、効率、安全技術が最適に相互調整されています。これにより我が社は幅広い用途で点数を稼ぐことができます」
車両の安全性
AGVには最高の安全技術が要求されます。過去には、こういった車両は隔離されたエリアでのみ使用することが考えられていましたが、現在では、時々人が手を貸す必要があることから、実際上かつ長期的に非現実的であることが分かっています。アンドレアス・メルクスは言います:「今日、点検修理のためにシステム全体の電源を切らなければならないようなトランスポートソリューションに投資する人はいないでしょう。つまり車両は作業員の安全を保証しなければなりません。そして当然ながら、それに見合ったセンサ技術が必要となります。我が社はSICKという素晴らしいパートナーを見つけることができました」
高速度にはPL dが必要
人が関与する場合には、センサ、評価ユニット、アクチュエータ、つまりシステム内の一連のコンポーネントが、パフォーマンスレベルdの高い要求を満たしていなければなりません。そうでなければ「アクセルオフ」にする必要があるでしょう。アンドレアス・メルクス:「必要な安全性が保証されなければ、AGVの速度を毎秒300ミリメートル以下に下げなければなりません。この「忍び足走行」は、長距離走行の場合、運用者にとって当然望ましくありません。そのため信頼性の高いセーフティスキャナが必要となります。そこで我が社に完璧なソリューションをもたらしたのがSICKのセーフティレーザスキャナS300 Expertです。このスキャナはEN ISO 13849準拠のパフォーマンスレベルdを満たします。これによりAgumosは速度を上げることができます」
48の防護フィールドを備えたセーフティレーザスキャナ
セーフティレーザスキャナS300の各バージョンの主な違いは、設定する防護フィールドの数です。これにより、さまざまな用途が可能になります。SICKオーストリアのIndustrial Safety&Motion Control Sensorsのマーケットプロダクトマネージャーであるヴェルナー・ツィッペルラーは次のように述べます:「プロフェッショナルとエキスパートのバージョンはとりわけ移動型アプリケーションで使用されます。このふたつは自由に設定できるフィールドセットの数が最も多く、生データインタフェースを備え、またエンコーダ信号をドライブから直接処理できるダイナミック入力も備えているからです。Melkus Mechatronic社のAGVに最適です」
生データを含む
防護フィールドに人が侵入すると、対応する安全機能が作動します。ヴェルナー・ツィッペルラー:「走行速度の減速、音響と視覚による警告、完全停止が必要に応じて実行されます。さらにセーフティレーザスキャナには、生データの伝送やナビゲーションサポートに使用するためのRS422インタフェースが備わっています」アンドレアス・メルクス:「弊社ではここに17つの安全関連プロセッサと8つの上位プロセッサを設置し、個々の走行装置、走行装置相互の関係、動作機構を監視しています。円を描くように走行したい場合には、それぞれの車輪が異なる速度で回転します。これにより旋回の動きが生まれ、円を描くように走ることができます。「これが全体で一致しなければ、セーフティコントローラが介入します。これはつまり、安全な速度で走行するだけでなく、安全な方向へも走行していることを意味します」メルクスはこう語ります。
安全をコンパクトに
設置スペースはAGVにとって重要なテーマです。これはスリムなS300だけの話ではありません。とりわけ小さなスペースを持つのが、パレット搬送に不可欠なフォークです。パレットを持ち上げるときには、これをパレットの下に正確に挿入する必要があります。これにはミリメートル単位の正確さが求められます。フォークはどこにも接触してはならないため、とりわけ高さ方向の調整が難しくなります。ここでもMelkus社はSICKのセンサスペシャリストに助けを求めます:「エキスパートたちが2D-LiDARセンサをフォークに直接取り付けられるように改造してしてくれたのです。これは今までになかったソリューションです」
2D-LiDARセンサによる高精度位置決め
S300 Expertがフルスピードでの走行中に人と機械の安全を確保するのに対し、2D LiDAR (Light detection and ranging/光の検出と測距) センサTiM5は、フォークをパレットの下にゆっくりと挿入する際の正確な位置決めを担います。フォークの先端には検知用のセンサが1つずつ取り付けられています。SICKオーストリアのIdentification & Measuringマーケットプロダクトマネージャーであるルネ・クラウスリングラーは次のように述べます:「2D-LiDARセンサTiM5は、AGVが後退でパレットの下に進入する際に、精密な位置決めに必要なデータを提供します。そこで問題となったのが、フォークの限られた取り付け高さでした。この問題は、この用途のために開発された特別バージョンのTiMセンサを使用することで解決できました。センサの形状がフォークに合うよう調整されたのです。この作業には真のチームワークが要求されました」
プロダクション4.0のための柔軟なソリューション
Melkus Mechatronic社は量産を中心としていますが、「既製の」AGVだけを生産してるわけではありません。顧客の要望も考慮されます。アンドレアス・メルクス:「Agumosは最初からモジュール方式で開発されました。これこそがプロダクション4.0で求められる真の柔軟性を実現する鍵なのです」AGVは近年、未来に向けて大きな飛躍を遂げました。今後はその柔軟性と購入コストの低下により、ますます多くの固定コンベヤシステムに取って代わるであろうと、アンドレアス・メルクスは確信しています。インダストリ4.0の実現に重要な構成要素です。さあ、全速前進!
左から:アンドレアス・メルクス(Melkus Mechatronic社オーナー)、ルネ・クラウスリングラー(SICKオーストリアIdentification & Measuringマーケットプロダクトマネージャー)、アンドレス・プロイナー(SICKオーストリアSales / Key Account Managerチームリーダー)、パトリック・ホフマン(Melkus Mechatronic社代表取締役)、ヴェルナー・ツィッペルラー(SICKオーストリアIndustrial Safety Motion Control Sensorsマーケットプロダクトマネージャー)
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