重量物にも簡単に対応 - 移動型重量ロボット向けのセーフティソリューション

2018/08/10

最新の生産現場では、人間とロボットの共同作業がより密接になっています。インダストリ4.0の時代に合った、フレキシブルなおかつ安全な自動化ソリューションを実現するには、防護柵の撤廃と、様々な場所で使用可能なロボットが必要です。スウェーデンのOpiFlexはそれに向けて、特許取得済みのソリューションを考案し、防護柵なしで、SICKの安全製品によって防護された大型産業用ロボットの移動型使用を実現しました。

 

 

「SICKと協力して、小ロットでの大量生産に適した自動化の実現という課題を克服することができました」と、OpiFlex社のヨハン・フリスク代表取締役は述べ、「お客様側での自由度が大幅に高まるため、当社にとって柵なしでのソリューションは非常に重要でした」と付け加えています。特に中小企業にとって、小ロットでの連続生産の自動化は大きな願望でしたが、ロボットセルが固定式に設置されて柔軟性が低かったこれまでの状況では困難でした。ところが今回、OpiFlexの防護柵なしの移動型ロボットセルと簡単なロボットプログラミングが登場したことで、上記の状況での自動化が可能になりました。

OpiFlexの移動型ロボットは、フォークリフト、ハンドリフトまたは無人搬送車を使用して生産現場内で適切な作業ステーションに移動して、そこに予め設置されているプラットフォームにしっかりとドッキングして差し込めば、すぐに使用可能になります。フリスク氏は、「これにより、大型ロボットを動かして、フル速度で動作させることが可能になります」と述べています。

 

 

SICKのSafe Roboticsによるロボットの防護

ここでは、SICKのセーフティレーザスキャナS300 Mini Remoteが2台使用されていますが、それらは移動ロボット型セルに固定式に取り付けられており、各使用場所でステーションの周囲にいる人物を検出します。人物がロボットに近づくと、セーフティレーザスキャナはFlexi Softセーフティコントローラに信号を送信し、まずはロボットの速度が低下します。その人物がセーフティゾーンに立ち入るまで、ロボットが完全に停止することはありません。従って、ロボットを毎回完全に停止する必要がないため、生産性が向上します。それに加えて、Flexi Softセーフティコントローラがロボットグリッパを防護して、ロボットがパーツを落としそうになると、つまり周囲が危険に陥りそうになると、ロボットを即座に停止します。

さらにこのセーフティソリューションでは、ロボットを別の位置に移動した場合に、様々な場所で使用可能なロボットセルが各ドッキングステーションにしっかりと固定されているかどうかも点検されます。その結果、ロボットとドッキングステーションの相互調節が理想的な状態になります。「当社のソリューションの画期的な点は、統合が極めて簡単であることです。すべてが既に揃っています。ロボットを選んで、適切な場所に配置すれば、すべてが即座に防護された状態になります」と、SICKのスウェーデン、バルビー拠点でSafety Systemsのプロダクトマネージャーを務めているオーケ・トルンロスは述べています。

 

 

Safety Services – 初歩段階からアドバイスを提供

ヨハン・フリスク氏とOpiFlex社のチームに対する最初の反応は、多くの場合疑いに満ちたものでした。「大型ロボット用に防護柵なしの移動型ソリューションを開発するという革新的なアイディアを持っていたのですが、人々からの最初の反応は、それは不可能だというものでした。それでは安全規則を満たすことはできないと言われました」と、フリスク氏は初期の困難な状況について語っています。しかし、OpiFlex社の粘り強い技術者たちはそう簡単に諦めることはせず、SICKのセーフティエキスパートと連絡を取り、彼らと協力しながら、最終的には適切なコンセプトを考案しました。

フリスク氏は、「SICKの数回のワークショップのおかげで、発生し得るリスクを識別することができました」と述べています。SICKによるサポートにはリスクアセスメント、包括的なコンサルティングや移動型ロボットセル用安全コンセプト構築での支援などが含まれていたため、最終的にはOpiFlex社に適した形でのインプリメンテーションが可能になりました。「私たちにとって非常に刺激的なプロジェクトでした。初期のリスクアセスメントからハードウェア/ソフトウェアコンセプトの構築に至るまで、プロセス全体にわたって付き添いながらお客様を支援しました」と、SICKのエキスパートであるトルンロスは述べています。

 

 

インダストリ4.0の時代: 小ロットでの大量生産

小ロットでの大量生産が求められていることが、フレキシブルなロボットによるいわゆる第三次ロボット革命の主な推進要因となっています。中小企業、一次サプライヤーと完成品メーカーはフレキシブルなロボットにより、小ロットならびに大ロットの連続生産での生産性と柔軟性を向上させることができます。当初OpiFlexのロボットセルは、小ロットの連続生産を機械をあまり使用せずに行う中小企業向けに考案されました。しかし今では、完成品メーカーと一次サプライヤーにおいても、小ロットでの大量生産の実現に向けて、柔軟性の必要度が高まっています。これらの企業の一部は、既にOpiFlexのソリューションに関心を示していますが、その理由は、同社のソリューションでは多くの場合、新しい機械でのセットアップにかかる時間が他の方法よりも短いためです。 

さらにOpiFlexでは、約10分というロボットの極めて迅速なプログラミングも実現しました。数時間かけてロボットをプログラミングする代わりに、オペレータは数点の質問に答えて、ロボットに簡単な動作をいくつか教え込むだけで十分です。その後ロボットは自身のプログラミングを自動的に行います。

 

 

3から5シフトで操業している一次サプライヤーと完成品メーカーにとっての大きな課題は、自動化ソリューションの調整または新規セットアップでの生産停止の計画です。従来型のロボットセルでのインプリメンテーションでは、生産が10日以上停止することも少なくありません。これは30から50シフトのロスに相当します。それに対してOpiFlexのソリューションでは、セル全体の設置時間が最大90パーセント短縮されるため、所要時間はわずか2から3シフトだけです。これは特に生産計画がタイトな状況下では大きな利点であり、時間ロスを最低限に抑えることができます。 

OpiFlex社の画期的な製品は既に表彰をいくつか受けており、ロボット工学分野で有数の賞であるIERA Awardのファイナリストにノミネートされたこともあります。それに関してヨハン・フリスク代表取締役は次のように述べています。「小規模の革新的な企業である当社にとって、SICKは目標を達成する上での大きな拠り所でした。比較的小ロットでの連続生産の自動化において、特に中小企業を援助する目的で、SICKと共にこのフレキシブルな移動型ロボットソリューションを考案できたことを、とても誇りに思っています。」OpiFlex社の目標は、フレキシブルなロボットによる第三次ロボット革命をさらに推進することです。その際の原動力は、防護柵なしの特許取得済みソリューション、簡単なロボットプログラミングとドッキングステーションですが、SICKの安全製品はこれらすべてをサポートしています。

 

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Josef Zimmermann
Josef Zimmermann

Josef Zimmermann 

Technical Industry Manager Robotics

ヨーゼフ・ツィンマーマンは、2010年よりテクニカルインダストリーマネージャーとして、ロボット工学のテーマに集中的に取り組んでいます。2000年にSICKに入社して以来、レーザ測定技術とネットワーク技術の分野でアプリケーションエンジニアとして活躍しています。今日の活動分野とは自律走行車のナビゲーションや産業・サービスロボットのプロジェクトを通して、早くから接する機会がありました。