「デジタルファースト」だけでは付加価値にならない

2021/06/30

SICKのデジタルマニュファクチャリング部門の責任者であるファビアン・シュミット氏は、「グロースマインドセット (Growth Mindset)」、意味のあるデジタル化、そしてバリュープロポジションの実現がどのようにつながっているか、自らの考えを説明します。

SICK Blog Digital First Image
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マインドセットは推進力なのか、それともブレーキとなるものなのか。ファビアン・シュミット氏にとって、これは (企業) 文化の問題です。彼は、固定観念から生まれる「Fixed Mindet」と、新境地を開拓し、新しい領域に踏み出すことを可能にする「Growth Mindet」を区別しています。「これは、日々の行動におけるポジティブな例の方が、トップダウンを提唱するよりもはるかにインパクトがあるということでもあります。考え方を変える人は、その変化がなぜ役に立つのか、なぜ必要なのかを理解しているから考えを改めようと思うのです。このような考え方は、デジタルトランスフォーメーションにも通じるものがあります。より良い未来を実現するために、今日の自分に何ができるかと問いかけることが大切なのです。」SICKのデジタルマニュファクチャリング部門責任者は、このように語っています。

SICKのデジタルマニュファクチャリングチーム: インテリジェントサプライネットワーク
のデジタルソリューション

シュミット氏は、「グロースマインドセット」を実践することが、チームでの自分の役割であると考えています。2021年初頭、SICKにデジタルマニュファクチャリングチームが設立されたのを機に、シュミット氏はトーマス・アドルフ氏と共にチームを率いてきました。彼にとって最も重要なのは、一貫したビジョンです。「私たちはチームとして、自分たちがどこに行きたいのかをしっかりと理解していなければなりません。そしてそのビジョンから、具体的なタスクを導き出していきます。ビジョンが抽象的であったり、大きな課題が具体的なステップに結びついていなければ、それに向かって努力することが難しくなります。私たちの中心的な目標は、グローバルなインテリジェントサプライネットワークのデジタルトランスフォーメーションです。これには、原材料の調達から生産、納品まで、生産に関わるすべてが含まれています。チームとしては、製造に焦点を当て、そこでデジタル化を推進したいと考えています。私たちは常に、まず最初に「バリュープロポジション、つまり自社だけが提供できる価値とは何か」という問いを投げかけます。私たちの使命は、インテリジェントサプライネットワークのデジタルソリューションを見つけ出し、それを実践して競争優位性を生み出すことにあります。」

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生産におけるデジタル化

彼にとって「デジタル化」という言葉は、非現実的な未来の夢ではありません。価値提案さえ明確にしておけば実現可能で、日常生活に欠かせない要素なのです。「未来というのは漠然としたものですが、どこかから着手しなければなりません。だからこそ、私たちはデジタル化をできるだけ具体化していかなければならないのです。以前、弊社では情報をワークブックに印刷して作業員に渡していました。関連作業に関する情報を得るには、何枚ものページをめくっていかなければなりませんでした。今日、これらの情報はデジタルで提供されるようになり、ページをめくる必要はなくなりました。しかし、それだけで付加価値と言えるのでしょうか。付加価値とは、提示された情報をその時点で実行すべき作業工程に紐づけること、つまり、状況に応じた情報の流れを生み出し、時間を節約することによって初めて生まれるものだと思います。将来的には、作業者もスマートグラスを着用して、作業環境に直接指示を投影するようになるかもしれませんね。もしかしたら、役割がすっかり逆転して、自分で作業をする代わりに、機械を監視する仕事をするようになるかもしれません。」

正しい情報で複雑さを克服

ファビアン・シュミット氏は、今後の仕事環境に影響を与える2つの動きであるオートメーションとデジタル化に目を向けています。その発展に伴い、現在人間が行っている作業はいずれなくなってしまうと考えられます。「しかし、この2つの要因により、ソフトウェアや機械の数も増加するため、生産環境がさらに複雑化していくことは間違いありません。私たちは、複雑化した環境をなんらかの方法で管理してゆく必要があります。ですから、私は工場から人間がいなくなるとは思っていません。当面の間、人間とその知性や創造力に代わるもはないのです。この世の中を司っているのは、やはり人間だと言えるでしょう。しかし、それ以上に重要なのは、この複雑さを克服するために、人間に正しい情報を提供するということです。私個人としては、近い将来、人間と同等のいわゆる超知能が生まれることはないと考えていますが、これについては意見が分かれるところです。」

均整のとれたデジタル化

シュミット氏は、「デジタルファースト」のような包括的な言葉は評価していません。「最も重要なのは、何を達成し、どんな価値を生み出したいのかということです。近年よく目にするようになりましたが、純粋に技術だけに頼ったアプローチでは、何も得られません。技術があるからといって、それを使うのでは意味がないのです。例えば、機械学習が可能だとしても、それが自分のプロジェクトのために最善のソリューションであるとは限りません。もしかしたら、もっとシンプルで安価なプロセスがあるかもしれませんから。最初からデジタルソリューションと決めてしまうと、ソリューションの幅が限定されてしまいます。」

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どのソリューションが適切であるかをできるだけ早期に判断するには、どうすればいいのでしょうか。この中心的な疑問への回答として、シュミット氏と彼のチームは、アジャイルワークと実用最小限の製品 (Minimum Viable Product (MVP)) を採用しています。MVPとは、ソリューションや製品の最小限の機能を備えた最初のプロタイプを意味しています。「改善を打ち出すためには、それが本当に改善であると確証できなければなりません。だからこそ、自分のアイデアをできるだけ早い段階で検証する必要があるのです。」その際、機能横断型チームやアジャイルワーキングを採用して、早い段階で様々な専門家を集めることが大切です。「デジタルマニュファクチャリングでは、学際的なチームを設立しましたが、生産計画者とソフトウェア開発者が同じ問題について考察しても、常に異なる回答が導き出されます。違う視点から問題を捉えているため、この方が迅速で革新的であると言えるのです。」

部門を超えた協力体制: 「他の人のやっていることを全員が理解するべき」

アジャイルチームとのコラボレーションから生まれたソリューションは、多くの場合、実用最小限の製品 (Minimum Viable Product) となります。ファビアン・シュミット氏にとって、MPVはソリューションがバリュープロポジション (価値提案) を実現できるかどうかを迅速に検証する最良の方法です。「これが、ユーザーに提示できる必要最低限のソリューションです。まだ100%の解決策ではありませんが、小さなフィードバックを重ねることで、正しい仮説に従ってアイデアを実行しているかどうかを見極めることができます。」ファビアン・シュミット氏は、社内のMVPによるアプローチを製造のデジタル化になぞらえて、次のように述べています。「製造のデジタル化を語るとき、デジタル化への変更によって、仕事の負担が実際に軽減するかどうかを、携わっている従業員に直接確認することが極めて重要です。何と言っても、彼らこそエキスパートです。誰もが社内プロセスを改善したいと思っているからこそ、この変化を上手く成し遂げて初めて、競争優位性を確立できると考えています。デジタルマニュファクチャリングでは、部門間の機能を超えた作業を重視してきました。誰もが他の人がやっていることを理解しなければならない。それが、現実においてもデジタル化の付加価値を生み出す唯一の方法なのです。」